熊本大学・遺伝子実験施設・荒木正健
熊本市本荘2−2−1
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2000年 5月 2日更新
この物語が現実のものとなるならば、人類の平均寿命は
かなり延びることになる。何故なら、病気や怪我で死ぬこ
とがなくなるからだ。ついに人間は新しい進化を遂げるこ
とになるだろう。しかし、問題が無い訳ではない。この話
にもあるように、地球の環境は現在と大きく変わることに
なるからだ。そしてまさにこの世が生き地獄となってしま
うだろう。
では、その問題を解決するにはどうしたらいいのだろう
か。これには大きく2つの解法があると思う。
一つは現在の住む環境を変えてしまうこと。実際、火星
への移住計画というものまであるのだから、これが現実と
なることはそう遠くないように思える。
もう一つは人間のほうに、何らかの処置をくわえるとい
うものである。具体的に言えば、資源の無駄使いを無くす
努力をするといった、間接的なものから、中国等の国の様
に一人っ子政策といった直接的なものまである。まあ、こ
の『イエスの遺伝子』の話が現実となるならば、当然治癒
をしないということもあるだろう。
ただ前者の方は、あまりに人間中心、身勝手さが目立つ。
自分達(人間)が好きなようにして駄目になったから周り
(植物や動物)に「次はこっちで住んで下さい。」といっ
た感じがある。
そして後者の方は、治癒をしないという点に問題がある。
人はもはや平等ではなくなる(平等であったことがあった
だろうか)と言えるだろう。
どちらにしても共通して感じられるのは、人間は生物を
支配(それもただ従わせるだけではない)するようになっ
た、しかも人間自身さえも、ということだ。まさに神であ
る。更には動物を生殖行為無しに複製してしまうのだから、
そのことからもそう言える。
ところで、もし人間が自然環境に放り出されたら、その
平均寿命はぐっと短くなるという話を、誰しも一回は聞い
たことがあると思う。
僕はこの類いの話しを聞くごとに、そんな訳があるかと
思うのである。大抵こういった話は、人間には身体に特異
性が無いから、というのが、その理由であるが、人間には、
頭脳があったから、他の動物にはないこの頭脳があったか
ら、今まで生き抜いてこられたのだと思う。そして、そこ
から生み出された科学力も又、人間のもつ力であると思う
から、平均寿命が短くなるというのは机上の空論でしかな
いのだ。
生物は、自己繁殖がその目的であると思うので、人間が
この科学力を用いて生き抜こうとする姿もまた、その本能
に従えばこそであろう。例え他の生物を淘汰してでも...
結局何が言いたいかというと、よく自然と対立して出さ
れる科学であるが、人間のもつ力と考える限り、科学も自
然の内なのだということだ。ただ他の生物は程よくバラン
スを保ってその環境を保持しながら生き延びてきたのに対
し、人間はその天秤にかけるには重すぎたということだ。
いつごろから重くなりだしたかというと、「神」を信じる
様になってからではないだろうか。
この物語にでてくる信者達(ブラザーフッドの面々)に
は、そのあまりの信仰心に、異常さを感じずにいられない
が、信仰心、「神」に対する信仰心は失えど、その異常さ
というものは、実は彼らと変わらないのではないだろうか。
実際、トムも異常な行動をしているが、それは人間として
当然の行為であると言えてしまう。やはり人間はそのよう
になるべき、エゼキエルが言った通りになるべくして生ま
れた生物、それも罪深き生物なのかもしれない。
*****1999年度・優秀作品*****
冬休みの課題レポート・1999
教育活動
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