アクティブボード・11月

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2002年 1月 6日 更新


アクティブボード・2001年11月

研究発表を行った学会;第74回日本生化学会大会
     2001年10月25日〜28日(京都)
タイトル;BMPファミリーサイトカイン群による
     マウス胎仔神経上皮細胞のニューロン分化抑制と
     アストロサイト分化誘導

発表者;柳澤 亮
   (発生医学研究センター・胚形成部門・転写制御分野)
Abstract;
 骨形成因子BMP群は神経発生において多様な機能を示すことが知られている一群のサイトカインである。我々は最近、BMP2がマウス胎仔神経上皮細胞のニューロン分化を抑制し、同時にアストロサイト分化を誘導することを見いだした。
 しかし胎生期マウス脳内にはBMP2以外のBMPも発現しており、これらのBMPの神経上皮細胞の細胞系譜制御への関与の詳細は明らかではない。そこで本研究では胎生期マウス由来神経上皮細胞で発現が認められたBMP2、BMP4およびBMP7のニューロン分化抑制能とアストロサイト分化誘導能について比較検討を行った。
 これらのBMPを神経上皮細胞培養系へ添加したところ、いずれのBMPもニューロン分化抑制作用を示し、アストロサイトへの分化を誘導した。その際、神経分化誘導に関与するbHLH型転写因子群の作用を抑制する転写調節因子Id1の遺伝子プロモーター領域の活性化が認められた一方、アストロサイトのマーカー蛋白であるGFAPの遺伝子プロモーター領域の活性化もみとめられたが、それぞれの効果はいずれのBMPによる場合も同様であった。
 さらにBMP2はIL-6ファミリーサイトカインに属するLIFと相乗的に作用してアストロサイト分化を誘導することが知られているが、BMP7もまたIL-6ファミリーサイトカインとの相乗的アストロサイト分化を誘導した。
 以上のことから、実際の生体内での機能についてはその発現量が重要であると推定されるが、今回用いたBMP群はいずれも神経上皮細胞の細胞系譜制御において同様の効果を示しうることが示唆された。


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