アクティブボード・11月

熊本大学・遺伝子実験施設
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2002年 1月 6日 更新


アクティブボード・2001年11月

研究発表を行った学会;第74回日本生化学会
     2001年10月25日〜29日(京都)
タイトル;Cardiotrophin-like cytokine (CLC)による
     未分化神経上皮細胞のアストロサイトへの分化誘導

発表者;植村 篤実
   (発生医学研究センター 転写制御分野・
       大学院医学研究科 小児科学専攻)
Abstract;
 IL-6ファミリーサイトカインはいずれも膜タンパクgp130を受容体複合体中に信号伝達に必須のコンポーネントとして共有しており、多様な生物活性を発揮するとともに重複した機能を示す。
 Cardiotrophin-like cytokine (CLC)は新たに同定されたIL-6ファミリーサイトカインの一員であり、運動ニューロンおよび交感ニューロンの生存とB cellの発生に関与する因子として単離されたが、神経系細胞の系譜制御における作用は未知であった。今回、CLCが未分化神経上皮細胞のアストロサイトへの分化を誘導することが判明したので報告する。
 マウス胎仔終脳由来の未分化神経上皮細胞をCLC存在下で4日間培養すると、アストロサイトのマーカータンパク質であるGFAP陽性で、かつアストロサイト様の形態を示す細胞が出現した。しかし、IL-6ファミリーサイトカインのシグナルを全く受容できないgp130欠損胎仔由来の神経上皮細胞ではこのような変化は認められなかった。また、CLCによるGFAP遺伝子プロモーターの活性化は、gp130の下流で作用する転写因子STAT3の優性抑制型変異体の強制発現やプロモーター上流のSTAT3結合配列への変異導入によって阻害された。
 これらの結果から、CLCはgp130を介したSTAT3の活性化により未分化神経上皮細胞をアストロサイトへ分化誘導することが判明した。


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