アクティブボード・12月

熊本大学・遺伝子実験施設
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2002年 1月 6日 更新


アクティブボード・2001年12月

研究発表を行った学会;第74回日本生化学会
2001年10月25日〜28日(京都)
タイトル;NO依存性アポトーシスの分子シャペロンによる抑制
発表者;後藤 知己
   (医学部 分子遺伝学講座)
Abstract;
 一酸化窒素(NO)は、多彩な生理活性を有するガス状ラジカルであるが、過剰に産生されると血圧の低下を招きエンドトキシンショックの原因となると共に、DNAの障害や酵素活性の阻害をおこし、細胞はアポトーシスに陥る (Gotoh and Mori, JCB 144, 427-434, 1999)。一方、分子シャペロンは細胞内におけるタンパク質の折りたたみや複合体形成、細胞内輸送を制御すると共に、タンパク質の変性防御や分解にも関与する。
 我々は哺乳動物のサイトソルに存在するhsc70-dj2 (HSDJ/Hdj-2) 分子シャペロン系がタンパク質の折りたたみやミトコンドリア輸送に働く最も重要なシャペロン系であることを明らかにした (Terada et al., JCB 139, 1089-1095, 1997)。今回、分子シャペロンがNO依存性アポトーシスを制御するかどうか検討した。
 マウスマクロファージ系RAW264.7細胞をNOドナーであるSNAP (1.5 mM)で12時間処理するとアポトーシスが起こる。ところが細胞にあらかじめ低濃度のSNAP (0.1 mM) 処理あるいは42℃、2時間の熱処理を行うと高濃度SNAPによるアポトーシスが強く抑制された。このアポトーシス抑制はミトコンドリアからのシトクロムcの流出よりも上流で起こっていた。この時hsp70に加えて、dj1 (hsp40)、dj2の誘導が認められた。また、SNAPによるアポトーシスはhsp70/hsc70とdj1あるいはdj2の共発現でも抑制された。hsp70/hsc70単独では無効であった。このことより、サイトソルのhsp70-dj1またはdj2分子シャペロン系がNO依存性アポトーシスを抑制することが示された。今後、この抑制機構を明らかにしたい。
   Ref. Gotoh, T., et al. (2001) Cell Death Differ. 8, 357-366


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