熊本大学・遺伝子実験施設
熊本市本荘2−2−1
Tel : (096) 373-6501, FAX : (096)373-6502
1998年10月 8日 更新
「ウエルナー早老症に於けるヘリケースの役割」
DNA helicase responsible for Wemer Syndrome
エイジーン研究所
所長 古市 泰宏
Yasuhiro Furuichi
(AGENE Research Institute, Kamakura, Kanagawa, Japan )
RecQ型ヘリカーゼは、生命維持に必須ではないものの、DNA
のメンテナンスという重要なプロセスに関与し、この機能が損
なわれると染色体の不安定化を誘発し、ウエルナー症やブルー
ム症に見られる早老・老化に伴って起こる病気の早期発症、及
びガン多発症の原因となっている。ヒトRecQ型ヘリカーゼには、
これまで知られているQ1、ブルーム(Q2)、ウエルナー(Q3)ヘリ
カーゼ3種と、新たに紹介する新規2種、Q4及びQ5ヘリカーゼ
を含む5種類があり、これらのヘリカーゼは「互いに補い合えな
い」独立した機能を果たしているように見える。このうち、研究
が最も進んでいるウエルナーヘリカーゼについて、我々は、それ
が核質(Nucleoplasm)に存在し、Nuclear Dotsを形成している
こと、N末端領域にDNA unwinding依存的に働く
5'-3' exonucleaseが存在すること、また、SV40やEBVで
トランスフォームした細胞と癌細胞等、増殖の早い細胞中では高
発現していることを見い出している。組織に於ける発現では、Q1
とQ5ヘリカーゼについては各組織に普遍的に発現しているが、ブ
ルーム、ウエルナー、Q4ヘリカーゼでは、組織特異的な発現を示
し、発現の高い組織と病気との関連が示唆される。本発表では、
我々の研究所で得られたウエルナーヘリカーゼの知見を中心とし
て、これらのRecQヘリカーゼについて、その発現・局在・生物学
的意義や病気との関連について、述べるつもりである。