「神経細胞死の分子遺伝学」

熊本大学・遺伝子実験施設
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2001年11月 2日 更新


「神経細胞死の分子遺伝学」
  理化学研究所・脳科学総合研究センター・細胞修復機構
     チームリーダー  三浦 正幸

 脳を含む神経系では複雑な細胞社会の中で神経細胞死が実行されている。この神経細胞死を調節する因子の探索は、生体での表現型を指標にした遺伝学的なスクリーニングによって行うのが理想的と考えられる。
 この目的のために私たちはショウジョウバエをモデル生物として用いて研究を進めている。この動物は発生遺伝学的な研究に適し、ゲノムプロジェクトが終了したことによって遺伝学的スクリーニングによって得られた変異体での原因遺伝子を特定することが迅速に行え、さらに特筆すべきは、ヒトの神経変性疾患に類似したモデルを作ることができ、ほ乳類では困難な、発症に時間のかかる神経変性疾患の遺伝学的な研究をショウジョウバエを用いて行えるのではないかとの期待がもたれていることである。
 今までの私たちの研究によって、カスパーゼの活性化機構がヒトとショウジョウバエで保存されていることが明らかになり、特に発生初期の未分化な神経細胞死の調節にApaf-1と呼ばれるカスパーゼ活性化因子が重要な役割を果たすことを明らかにしてきた。Apaf-1 の上流でショウジョウバエ細胞死を誘導する因子reaperが知られている。reaperによる細胞死実行経路を遺伝学的に明らかにする目的で、染色体欠失系統を用いたreaperのドミナントモディファイアースクリーニングを行った結果、JNK の活性化がreaperによる細胞死実行に深く関わっていることが明らかになった。このようなカスパーゼに依存する細胞死メカニズムに加え、カスパーゼ非依存的な細胞死が神経変性に重要な役割を果たすという知見が蓄積されている。
 そこで、私たちは、新規神経細胞死実行経路を網羅的に同定する遺伝学的なスクリーニングを行っておりその結果も合わせて報告したい。


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