優秀作品(1)

熊本大学・遺伝子実験施設・荒木正健
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2001年 3月 28日更新


『あなたのなかのDNA』(文学部)


 この本を読むことによって、今まで全く持っていなかったDNAに関する基本的な知識が増えました。同時に、身近なものとして感じる事のできなかったDNA を自分の身近かなものとして感じる事ができました。遺伝子組み換え作物、クローン、人工授精、体外受精、出生前診断遺伝子治療、環境ホルモン等の問題に、今まで新聞やニュースで少し知っている程度で、これらの問題が、それほど自分と関わりのある重大な問題なのだという実感もわかず、あまり注意を払っていなかったのですが、今回この本を読むことによって、自分や、これから先、いつか生まれてくるかもしれない 自分の子供たちにも深く関わってくる世界的規模の重大な問題なのだということを実感しました。
 この本の中で特に印象に残ったのは、クローンの話と赤ちゃんが授かるものから作るものになってきたという話です。まず、クローンについてですが、私たちの周りにクローンがたくさんいるという事実にとても驚きました。無性生殖、トカゲの尻尾、イモリの脚、ゴキブリの脚、そして何よりもプラナリアという再生能力がすごい生物の存在です。世の中にそんな生物がいるなんて考えた事もなかったのでとても驚きました。そして、一卵性双生児もクローンだという事実は、言われてみればそうだけれども、同じ人間として、クローンが存在していたのだという発見が私にとっては、とても大きなものでした。また私はクローンと聞くと、ただの科学者の興味からの研究なのだという勝手な考えを持っていましたが、その裏には、科学者の何十年にも及ぶ苦労や、品種改良の技術の一つと考えていることなどの様々な目的があったことを知って、改めて自分の考えが安易なものであったことに気付かされました。
 次に印象に残ったのは、赤ちゃんが授かるものから作るものという感覚になってきたという事実です。はっきり言って、この話を読んだ時は、同じ人間としてショックでした。
夫婦の間で子供ができないというのは確かに辛い事だろうけど、だからといって全く知らない相手の精子によって人工授精をしたり、四十週も妊娠状態にいるのは面倒とか仕事で忙しいからという理由で他人に産んでもらう「代理母」の存在や、生まれてくる子供が欠陥のない子供でなければならないという価値観など、私の今まで持っていた考え方とは全く違って、何だか、親が自分の子供を選んでいるという感じがして大きなショックを覚えました。様々な技術の発展によって、赤ちゃんの産み方にも多様な方法が増えてきたけれど、技術の発展の代償として、私たちは何か心の中の大切なものを失ってしまったような気がします。
 これから先、私たちは、科学に関する人のみならず、皆で、これらの問題に立ち向かって、たとえ時間がかかってもいいので、テレビや新聞などの情報をそのまま受けとらずに、あらゆる面から見てしっかり考え解決していかなければならないと思います。私達になぜ生きているのか、そしてこれから先どのようにして生きていくべきか、一人一人にとって避けられない問題なので、しっかり考えていきたいものです。


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