優秀作品(10)
熊本大学・遺伝子実験施設・荒木正健
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2001年 3月28日更新
『動き出した遺伝子治療――差し迫った倫理的問題――』(薬学部)
1.遺伝子について
遺伝子とは全ての生命体に共通した"設計図"です。私が一番感心するのは、遺伝子の本体が全ての生物でDNAであるということです。小さなウイルスからヒトに至るまでDNAにより設計されていると思うと、生命体はいわば兄弟みたいなものに思えてきます。進化の過程で様々に枝分かれして、今のような世界になってしまったというのも、DNAということを考えると納得できます。又、熱などの環境の変化に強いため、設計図として使われるのに有利だったのでしょう。それを考えると昔はDNAが遺伝子の本体ではない生物もいたのではないかと思えてきます。環境の変化があまりなく温暖なところ(時代)では、そのような生物が進化していてもおかしくないと思います。
2.遺伝病について
私が感じたことは、「遺伝病とは様々である」ということです。変異遺伝子が優性であったり劣性であったり、男だけにしか発症しないものであったり、たった一つの塩基が変異により変わっただけで発病したり、本当に様々だなあと感じました。また突然変異が原因で発病するものもあったり、変異遺伝子が見つかっても発病しないものもあったりと、遺伝病を完璧に予測することは不可能だろうと思います。それでも病気である以上、解明せねばならない分野であるとも言えます。
3.遺伝子治療について
遺伝子治療について、私が最も有効だと思うことは、薬のように繰り返し投与する必要がないということです。外来性遺伝子を導入し、体内でタンパク質に翻訳させ、機能を回復するという考え方にすごくひかれました。究極的な治療であるといえます。
問題として、ベクター(乗り物)をどうするかという問題があるようです。薬にもいつ、どこで、効き目が作用するのか、といった具合に様々な問題があってそれに似ているなあと思いました。
4.遺伝子診断について
誰のためにするのか、いつ、何のためにするのかについて、よく考えなければいけないことだと思います。1.個人を尊重し、その人の意思決定を尊重する。2.できるだけ危害を避ける。3.できるだけその人自身のためになることをする。4.できるだけ公正に対応する。といったような基本原理が医療において成り立つべきであるそうです。例えば事前のインフォームドコンセントが成されておらず、危険にさらされる状況が隠されるならば1、2に反することになります。診断を受けようとする人に医者からの外圧がかかれば1、3に反するし、拒否して不利益を被れば2に反するといった具合にその基本原則が医療の中心にあります。このことを考えると、遺伝子診断に関して様々な問題が浮かび上がってきます。例えば、遺伝情報の開示について遺伝子検査を受けて、その情報が漏れてしまったら1に反してしまいます。また、結婚をするとき、配偶者の遺伝的背景を知るかどうかについても1の個人の尊重と2の危険防止の両方の点から、どちらを選択すべきかということになります。また、出生前診断の問題があって、胎児をいつから生命体と考えるか(1の点)、中絶による精神的苦悩のケア、その病気をもつ障害者の差別など、諸問題は多岐にわたります。将来当たり前のように遺伝子診断が成され、胎児や両親の遺伝的背景が完璧に管理される時代がくるかもしれないので、これらのことについては今のうちから十分に審議され、方向性を見いだしておくべきだと思います。自分の将来、そのことについてきっと悩む日がくると思うので、今のうちにより知識を得たいと思いました。
全体の感想
おそらく、今後新たな技術がどんどん開発されるだろうと思います。その表面的なことのみに注目せずに内在していることにも目を向けておくべきだろうと思います。どんな技術にも必ず問題点があるはずだから、技術の施行の前にそのことについて考えるための委員会を設置したりすることが重要だと思います。そうすることで新技術がスムーズに使われるようになるだろうと思います。
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