優秀作品(11)

熊本大学・遺伝子実験施設・荒木正健
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2001年 3月28日更新


『イエスの遺伝子』(薬学部)


 私が本書を読んでまず考えたのは、遺伝情報が解明されていくことは手ばなしで喜べることばかりではないということである。これから世界中で研究が進んでいって、本書と同様な技術や機械を開発したなら、と考えると少し怖い。
 例えば、ジーンスコープ(DAN)やジーン、ジニーといった機械である。確かにそれ自体、使い方によっては限りなく有効に使えるだろう。なんでもジーンスコープでは、DNAの塩基配列上の異常を読み出すだけでなく、それによってその他どのような疾病にかかり得るかを予想することができるのである。しかし、これも場合によっては考えものだ。もしもその時点で治療不可能な病にかかっているとわかった場合、どうなるのだろうか。本書では、ナザレ遺伝子という驚異的な遺伝子により一人の少女の命は救われたが、遺伝情報から将来病にかかると予想される人は保険に入れないということだって十分あり得ることだと思う。
 ジーン、ジニーでは、その遺伝子をもつ人物の外見の特徴を立体映像として見ることができるということであった。これは本書でもあったように、犯罪者を特定するにはとても有効だと思う。だが、心ない人が使うなら、いくらでも悪用できる代物ではなかろうか。
 つまり、このような機械は使用する人物によって良くも悪しくもなるのである。これは上記の二つの機械とともに登場したIGORというデータベースにも同じことが言えるであろう。
 ともかく、私が思うに、これから遺伝子を扱う研究に携わっていく者に必要なものは、倫理や良心といったものである。それがなくなったら、技術だけが一人歩きして、世の中ではプライバシーの保護なんて話にもならないようなひどい混乱状態が起こるだろう。
 私は学部上、これから遺伝子関連にかかわっていくことも多いだろう。そんなときに私は、技術を有効かつ大切に使っていけるような人間でありたいと願う。
 最後に、トム・カーター博士がこれらの技術やナザレ遺伝子を安全にかつ有効に使おうと考える人物であったことを、心から感謝したい。



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