優秀作品(2)

熊本大学・遺伝子実験施設・荒木正健
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2001年 3月 28日更新


『あなたのなかのDNA―必ずわかる遺伝子の話―』
『食卓の上のDNA―暮らしと遺伝子の話―』(文学部)


 「分りやすいと思います」の一言に期待を寄せつつ読んでいったら、本当に分りやすかったので助かりました。とても勉強になったと思います。ただそれでも、私にとっては新しいこともあまりに多くて、理解には及ばないところもまだまだあるのでしょうが…。
 この本のなかには、DNAを知るための説明はもちろんだけれど、それだけではなく日常生活に充分役立ちそうな考え方なども示してあったのが印象的でした。例えば"無駄・矛盾を多く持っているくらいが生きものらしい"ということ。自分の生活には矛盾や無駄がとても多くて思い悩むこともきっとあるけれど、このひとことは多くの人を癒し励ます能力を持っていると思います。DNAを知りたくて手にした本からまさかこんなことをも学べるとは正直驚きました。
 気になったのは、本文中何度か見た「こういうシステムが社会にもあればいいのだけど」という言葉。作者がいつも社会のことを気にかけていることが伝わってくる気がします。少なくとも今の私にはまだまだ詳しいことは語れないけれども、たしかに生きものが生まれつき持っている仕組みから学ぶことは多いはずだということは感じられ、人間も生きものの一員であるという自覚をもって社会の様々な問題に取り組む必要性はこれからますます増えていくと思います。『食卓の〜』の中で触れられた、自然の「サイクル」の中の生活のススメについては、人間をこのサイクルに運んでくれるプラスミドのようなものがあれば良いのになあなどと考えてしまいます。地道に努力するしかないのでしょうけれど。
 私が意外に思い、驚いたことは、クローンや遺伝子組み換えというものは決して人工でしか生じないものではなく、実は自然に存在しているということです。とくに一卵性双生児の例は、人間のすべてがゲノムで決まるわけではないことをよく理解させてくれました。双子の性格の違いは DNAだけでは説明できない。正直、生きものの全てがDNAに決められているとしたら少し怖いなと思っていたので、スッキリしたというかホッとしたというか、何だか安心できました。
 この読書を通じて私が変わったなと思う点は、もちろんDNAに関する知識が少し増えたことも嬉しい変化ですが、「科学」がずっと身近に感じられるようになったこと。以前はちょっと自分とは遠い存在に思えて敬遠しがちだった「科学者」「研究者」も、今では親しみすら覚えます。その研究や成果に、私ももっと目を向けるべきだと思えるようになりました。あとは本文中何度となく訴えかけられてきたように、私ももっとゆっくりじっくり物事を考える人間にならなくてはと志をたてているところです。浅はかな自分が今はただ恥ずかしい。
 たとえば"物"が不足したとしても、私たちが生きているかぎりは"生きもの"は存在し続ける。モノに偏っているとも言える今の社会、今の自分を見なおし、その未来について考えることはとても重要になってくると思います。この本は理系の教科を熱心には学んでこなかった私にも、生命科学に少しつっこんだ気分にさせてくれ知識を与えてくれながら、これからの社会を考える大切さを教えてくれました。これはありがたい。「遺伝子組み換えは危険かもしれない」と聞くとただ「そうか。危ない」と思い込むのではなくて、「何故、そうなのか?」理由や事実を知ったうえで自分で考える習慣をつけようと思うし、そうすることはおもしろいことだということも知りました。
 手始めに、この本のような科学の入門の入門の類の文庫本でも探して、読んでみようかなと思い始めたところです、なんとか試験期間を乗り越えたその後になりそうですが。


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