優秀作品(5)

熊本大学・遺伝子実験施設・荒木正健
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2001年 3月28日更新


『生きてます、15歳。』(教育学部)


    初め、題名と大まかな作品紹介を見た時、「きっと超未熟児で全盲の女の子の苦労した話や深刻な話が書いてあるんだろうな。」と、なぜか先入観を持っていました。しかしこの本の内容はそんなものではありませんでした。確かに苦労した話だし、考えようによっては深刻な話もたくさんあるのですが、15歳の若さあふれる笑いのまざった軽快な印象を私は持ちました。
 しかし、話自体は非常に驚くことばかりです。ふつう四十週おなかで育つところを二十四週で生まれてくるなんて、私の頭の常識では考えられないことでした。ボールペンと同じ大きさの赤ちゃんはそんな姿でも確かに生きている、ということは私に少なからずショックを与えました。医学がもしここまで進歩していなかったらすぐに失われてしまったかもしれません。PCRの講義で、たくさん遺伝子に関する医学の進歩、未来への希望を聞いてきましたが、この本を読んだときほど、医学の進歩が本当に人間にとって役立つありがたいものだと思ったことはありませんでした。私は今まで医学の進歩に否定的でした。技術的な面ばかりが進んでいき、「心」ばかりが取り残されていくような気がしていたからです。
 しかし、この本の著者の母親が生まれたばかりですぐにも死にそうな著者に、「お願い、生きて。」と願い、すぐれた医学と母の祈りで赤ん坊は生き延びました。そのことは間違いなく素晴らしいことです。そう考えると、私の医学への進歩への否定的な考えは、まだまだ青く、もっとしっかり現実を見すえて考え直すべきではないかと思えてきました。
 また、本を読み進めていく中で、何度も驚いたり感動せずにはいられないところにぶつかりました。母と子の生きている実感があふれているように思えました。きっとそれは、ただ生物として「生きて」きたのではなく、人生を深く「生きて」いるからなのでしょう。医学などの努力で赤ん坊は「生きる」ことができたのかもしれませんが、その後、その子が「生き生きと」生きてくることができたのは、母親の愛情のおかげだと思います。
 「生きる」ということは本当に素晴らしい。この本は私に、この世に生を受けるということ、そして人生を生きるということの2つの意味での「生きる」素晴らしさに気づかせてくれました。


*****2000年度・優秀作品*****
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