優秀作品(9)

熊本大学・遺伝子実験施設・荒木正健
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2001年 3月28日更新


『乙武レポート』(理学部)


 読んでいくうちにまず感じたことは、この人は本当に手足がないのだろうかということでした。前向きで、明るくて、強くて、しっかりしていて、まったく障害をもつということを思わせないところがあると思います。
 私がこういう風に感じたのも障害者の方々はつらい思いをし、苦しんでおり、絶えず戦っているものであるという偏見のようなものをもっていたからだと思います。実際、そういう人達もいます。しかし、乙武さんのように、明るく、生きている人もいるのです。それが珍しいのではなく、単なる人の個性のうちなんだとわかりました。  また、乙武さんがサブキャスターを務めることとなり、取材を進めていくうちに、障害者に向けられた社会の厳しさや、逆にあたたかさも伝わってきました。
 バリアフリーの取り組みの様子について、取材の様子を通して、よくわかりました。京都の重要文化財に指定されたお寺においてバリアフリーの取り組みが困難であるということでした。重要文化財にはくぎ1本打ってはならないという法律のため、せっかく設置されたスロープを撤去しなければならないのです。乙武さんがこの事について役場に取材すると、自分達のことをいいように述べて、乙武さんをうまくだましました。彼らは、本当に市民の事を考えているのでしょうか。歴史ある建物を大切に思うのはすばらしい事だと思います。しかし、現在生きている人間の不便さをそっちのけにして、市を誇る建物を大切に大切にしているなんて、そのうえ問い詰められればうまくごまかすなんて、とてもきたないと思います。
 重要文化財はそうまでして守らないといけないのでしょうか。私は、京都の役場の人達が、この本を読んで多くの障害のある人達の声に耳を傾けてくれればよいなあと思いました。
 駅などにも、バリアフリーは設けられています。そういった設備の中には、あっても危険で使用できないものが多いとのことでした。全く、使用する人の身になっていないものが多いのです。しかし、そのような設備を設ける側にも変化はあるようなのです。障害をもつ人から話を聞いたり、使ってもらったりしているそうです。こういった、できる限りの努力がとてもあたたかいと思いました。
 乙武さんの「自分の障害を楽しんでいる。」という言葉に、とても驚きました。乙武さんは、自分の体が不自由なのに、それに苦しんでおらず、他人に甘えることもなく、できる限りの事は自分でやっています。この本以外に、テレビで何度か乙武さんを見たことがあります。けんかのやり方を示してみたり、ボールを使ってドリブルしたり、ファンにサインしたり、車いすから降りて歩いたりしていました。これらの行動は、テレビを通じて「障害をもっていたって、できない事ばかりじゃない。できることはたくさんあるんだ。」と伝えているかのようでした。障害をもつ多くの人達は勇気づけられていると思います。「『五体不満足』を出版してから、2年間ずっと、特別な存在とされてきた。オトちゃんと呼ばれるようになった。僕は特別でもなく、普通に人生を送ってきただけである。もうオトちゃんは存在しない。乙武洋匡が存在しているんだ。」という言葉に、私はとても衝撃を受けました。乙武さんの述べることにより、私はずいぶん障害をもつ人々への考え方が変わっていくように思います。自分を含めて、社会がもっと優しいもので、あたたかいものに変わっていくように思いました。


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