優秀作品(1)

熊本大学・遺伝子実験施設・荒木正健
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2002年 3月24日更新


『死の病原体プリオン』(工学部)


 医学用語などの専門用語が多く、非常に難しかったが、とても興味深く、また人類の将来について危惧を抱かせるような内容だった。
 私がこの本を読み一番深く思ったことは、この「プリオンタンパク質」が、はたして「死の病原体」と呼んでよいのか、ということである。一応、まだ仮説となっているが、この仮説が真であれ偽であれ、脳がスポンジ状になる病原体を広めた原因は人間である。
 「狂牛病」にせよ「クールー」にせよ、感染のルートは普通の自然界にはありえない、人間の狂った文化や汚い欲が生み出した病気と言うことができると思う。そもそも、「プリオン」はただ物質なのである。ウイルスなどと違い、自らのコピーをつくったり、進化したりして子孫を残そうとはしていない。脳がスポンジ状になるのは何らかの方法で摂取してしまい、体内で化学的な作用が起こるからなのだから、もし、子孫を作ろうとするなら、こんな効率の悪いことをするだろうか。
 本来ならば、ただの突然変異である「プリオン」が世の中に出回ることはない。結局、「プリオン」をただの突然変異から感染症に変えてしまったのは人間なのである。
 確かに感染すれば100%死んでしまう。しかし、自然界ならばその感染者が死んで全て終わりである。人間が自分の目先の利益を考えたため、結局自分の首を絞めてしまったわけである。つまり、「プリオン」自体は死をもたらすかもしれないが、人間を殺しているのは人間自身である。
 これから科学が発達すると、いつか「スポンジ状脳症」が不治の病でなくなるときがくるかもしれない。しかし、この病気を正当化する気はないが、不治のままの方がよいかもしれない。治療できるようになると、「肉骨粉」のような最悪なものが再び世の中に出回るようになるかもしれない。私はこの「プリオン」が人間の馬鹿げた行動を抑止するものであってほしいと思う。


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