2007年度 教養科目
I 自然と情報  最前線の生命科学C
−−夢の技術PCR−−

熊本大学
生命資源研究・支援センター
バイオ情報分野
荒木 正健
熊本市本荘2−2−1
Tel : (096) 373-6501, FAX : (096)373-6502
2008年 7月26日


2007年度期末テスト

[回答集]
<問2について>

(問2)講義中に説明した「カルタヘナ議定書」や、「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」(カルタヘナ法)は、生物多様性の確保を最大の目的としています。しかしながら、この記事にあるように、人間にとって害になる存在(生物)は、絶滅させた方が良いという考え方もあります。遺伝子組換え生物を使うかどうかは別として、害虫の駆除やウイルスの根絶を目的とした「不妊虫放飼法」についてどう思いますか?

・人々の生活に害をなすものだから根絶するという考えにあまり賛同できない。害虫を食べる益虫も存在するので、根絶してしまっては、益虫までもが根絶されかねないと思う。生物の多様性の確保を最大の目的としているのに害虫は根絶し、人間に影響のない生物ばかりを残すのは、人間のエコだと思う。(教育学部)

・自分は自然がとても好きなので、長い時間をかけて進化してきた生物を絶滅させるなんて正直とても嫌です。しかし、生物が自分達の生命を脅かす存在をできる限りの力で廃除しょうとするのもまた自然なことだと思います。なので自分は決して反対はしません。(理学部)

・はっきりと賛成とは言えないが、反対ではない。機会を使ったりして他の生物を根絶しようと考えるのは人間だが、それは自分達の命を守るためであって、そういう気持ちは全ての動物が持っているものだと思う。だから、「不妊虫放飼法」というのも自分達の命を守る一つの手段として考えたいと思います。(工学部)

・個人的な考えとしては、蚊なんていなくなってくれたほうが、夏を気楽に過ごせますし、今まで何百匹(何千?)も、たたきつぶしてきている生き物ですから、彼らが死ぬことには罪悪感のかけらもありません。しかし、絶滅させるというと話は違うと思います。我々人間からすれば害虫だとしても、他の生物からすると益虫だったりして、その虫なくして生きられないという生物もいるかもしれません。自然界は多様な相互関係で成り立っているので、そのどこかを絶滅という方法で取り崩すと、影響はそこだけでとどまらない可能性があります。故に害があるものに対してでも、絶滅させるのは避け、少なくとも万策つくした後の最終手段であるべきで、容易に行ってはならないと思います。(工学部)

・生物多様性の保護とは言えど、人間はやはり自分達の種が一番大事なので、人間に対して危害を加えるような害虫であれば絶滅させることに賛成する。ただし、全ての害虫ではなく、やはり、蚊のように血を吸われたり、病気をもたらしたりするような種を持つような害虫に対してである。(工学部)

・かなり危険だと思う。確かに一時的には人間にとって病気も減るし、大きなメリットであるが、人間にとって害虫でも、自然界ではその虫が果たす役割は大きいと思う。その虫を食べる動物も絶滅したりすると、また人間の食べる動物もなくなったりして、必ず生態系は崩れると思う。もし「不任虫放飼法」を使うならば、絶滅まではさせずに、不妊の虫を微量に放して、個体数を減らすくらいにしておいた方が良いと思う。(工学部)

・第一印象ではどちらかというと反対よりだったのですが、今、不任虫放飼のプリントを見て、薬剤による環境汚染が少ない、同種内の繁殖に関わる構造を壊すだけで、他の種類への影響が少ない等の利点は、とても良いなあと思った。でも、やっぱり人間が他の生物を絶滅させてしまうのはどうなのかとも思う。(工学部)

・「ウイルスの根絶」のみ目的ならば問題ないが、ウイルスを根絶させるためには、どうしても害虫を駆除しなければならない。一部の地方が駆除を始めると、世界中が駆除し始め、結果種の絶滅につながる恐れがあるため、あまり賛成はできない。(工学部)

・「不妊虫放飼法」を農業等に利用するのには賛成です。これによって害虫に農作物を食い荒らされる被害等を無くすことができるからです。ただ、色んな所に不妊虫が蔓延した場合、それによって自然の生態系にどのような影響を及ぼすのかが心配です。予想もしないことが起こりうる可能性もあるので、「不妊虫放飼法」については慎重な考えが必要だと思います。(工学部)

・確かに、害虫駆除など「不妊虫放飼法」によってもたらされるメリットは大きい。しかし、それは人間界においてであって、実際の所は一つの種の根絶となるので考えさせられる。人間の物差しで考えて、絶滅させられた動物はかなりいる。しかし、最近は絶滅危惧種の動物保護の活動が活発となっている。だが、進んで絶滅においやる「不妊虫放飼法」は矛盾していると思う。(工学部)

・基本的には反対です。人の都合で、改造した昆虫を作り、害虫を駆除するのは、遺伝子操作をすることができる人間が破ってはならないルールの一つだと思います。逆に、他の種を攻撃している人間が同じようなことにあえばどのように思うでしょうか。人と虫とが全く同じだとは思いませんが、私は反対です。(工学部)

・目の前のことだけを考えるなら、不妊虫放飼法によって、人間に害を与えるものは、絶滅させた方が良いと思う。しかし、その種が絶滅することによって自然には何か影響を与えると考えることができる。大きい、小さいは別として、そのことが自然環境を悪くするようなことがあってはいけないと思う。そのような部分についても問題がなくなれば、不妊虫放飼法に賛成できる。(工学部)

・私は「不妊虫放飼法」を使うことはあまり賛成できませんが、仕方がないことだと思います。害虫やウイルスで多くの人が犠牲になる前に何らかの対策が必要だと思うからです。しかし、被害の出ない場所で、むやみに害虫やウイルスを駆除、根絶することは反対です。いくら感染するからと言ってもむやみに命ある生物等を殺していいのかと不思議に思います。人を殺すことがいけないことであるのはもちろんですが、生物は殺しても良いのかというと、決して良いことではないと思います。そのため、私は「不妊虫放飼法」は最小限使用して何らかの別の方法で解決するのが望ましいと思います。(工学部)

・害虫であろうと生物なので、不妊虫放飼法を実行することは可哀想な気もするが、正直なところ、人間に害があるので、仕方ないと思う。もし、不妊虫放飼法を実行せずに、害虫を放置しておいて、私達に何らかの被害を出すことになっても、耐える気なのかと思う。(工学部)

・遺伝子組換え生物を使用するかを別とした、害虫の駆除やウイルスの根絶を目的とする「不妊虫放飼法」には賛成です。生物多様性の確保を行い、それよりウイルスが蔓延することで人類が減少してしまっては意味のないことだと考えるからです。私は自然環境を守りつつ人類が生きていくことを望みます。(工学部)

・良いことだとは言えないと思います。人間が自然界に手を加えることで食物連鎖のような自然界の掟が破られてしまう危険性があると思うからです。(工学部)

・不妊虫放飼法を用いた例として、沖縄のウリミバエに対して170億程の費用を費やしてウリ類を守ったことが挙げられています。それほど費用がかかったのは不妊虫放飼法が適しているのかの厳しい条件を検証する調査をしたり、ウリバエ生産工場を造設して200万匹も生産しなければならないからだと思います。また、事業の間のハエの個体数は島全体で千万匹程もあり、空恐ろしい数字です。様々な危険やお金、人手を、害虫駆除による利益と比較して皆で決定すべき問題です。(医学部)

・害虫の駆除やウイルスの根絶を目的とした「不妊虫放飼法」と「カルタヘナ法」は、同じ人間が作ったものなのに、矛盾していると思う。どちらでもできる限り推進していかなければならないものだと思うが、最終的に「不妊虫放飼法」は人間が自分の身を守るためには必要なものだと思う。カルタヘナ法を優先させたとして、それによって、害虫やウイルスのために人間が危機に陥るようなことがあればそれはまた、おかしなことだと思う。しかし、だからといって、害になるからと、生き物をむやみに殺す、根絶するようなことがあってはならないと思う。害虫やウイルスを駆除するような時でも、命の重さというものは常に考えておくべきことだと思う。(医学部)

・害虫やウイルスが人間に及ぼす影響によっては、このような「不妊虫放飼法」を利用することもやむを得ないと思う。薬剤を使用することで生じるリスクよりも上記の方法の方がリスクが少ないのではないかと考えるからだ。別紙の資料にある「沖縄のウリミバエ」の話は初めて知った。しかも、ここ最近根絶したのであったから驚いた。この「不妊虫放飼法」による生態系や環境への影響は未だ確認されていないことが恐ろしいことだと思う。私達の周りには、いろんな害虫やウイルスが存在する。それらの全てのウイルス害虫を根絶させることは不可能だ。駆除の方法だけではなく、共存する方法を考えていくことも必要だと思う。(医学部)

・倫理的に考えると人間にとって害なのだから死滅しても良いという考え方は間違っていると思います。ただ、自分がもし、農家の人だったりして直接被害を受けるとなると「不妊虫放飼法」を肯定していたと思います。(医学部)

・最初、害虫の駆除やウイルスの根絶は自然界のかたちを崩してしまうのではないだろうかと考え、行ってはならないことだと思っていた。しかし、「不妊虫放飼法」は、野外に薬剤を使用しないので環境汚染が少ない、薬物抵抗性のように次第に効果がなくなるようなことがない、すでに存在する種を放すので、外来種を持ち込む様な在来の生物群集の攪乱を起こさない、同種内の繁殖に関わる構造を壊すだけで、他の種類への影響が少ないなどの優れた特徴があるということを知り、年間多くの感染者や死者を守るためには、必要なことなのではと改めて考え直した。しかし、必要以上にこの方法を行っていくと、自然界の形が崩れ、それにより逆に人間にも悪影響を及ぼしてしまう可能性もあると考える。したがって、慎重に行われなければならないと考える。(医学部)

・やはり、ヒトとヒトにとって害になる存在の共存は無理だと思うし、上述の「カルタヘナ議定書」なども当然のことながら人との共生の上での生物多様性の確保が目的だと思うので、理由あってのこういった「不妊虫放飼法」は仕方ない部分があると思う。ただ、今回のように、遺伝子組換えを使う時、一つ間違えば、生態系を狂わすことになるので、十分に研究や話し合いを行うべきだと思う。(医学部)

・「人間にとって害になる存在は、絶滅させた方がよい」という考えには100%賛成できない。今まで人間にとってどうしたらより暮らし易くなるかということを中心に追求してきたからこそ、絶滅した動植物がいたり、絶滅の危機に頻している生物が多くいると思うからだ。だから、人間の視点のみで物事を考えるのは良くないことだと思う。「不妊虫放飼法」も人間の都合で生み出されてきたことに変わりはないが、他の種類の影響が少ないということなので、外来種を持ち込んだりするよりは、有用な技術だと思った。また、失敗したら、多額の費用が無駄となるので、リスクも大きいと思った。(医学部)

・人にとっての害虫=絶滅させるべきというのは、人のエゴだと思いますが、実際、自分に被害、それもすごく重大な害を与える生物なら、この「不妊虫放飼法」について賛成すると思う。けれど、その生物が絶滅したときの生態系への異常は前もって考えておくべきだと思います。(医学部)

・(問1)では一方的に反対だと言う意見を持っていたが、自分勝手で自己中心的な考え方だと思うが、人間が生きていくためには、必要なことなのかなと「不妊虫放飼法」を読んで思いました。ただ、やはり、ある特定の種を根絶することで生態系が崩れるのではと思います。それより、新たな課題がでてきたり、最悪取り返しのつかない様なことになるようでは困るので、先を見て、計画を立ててから行ってほしいと思います。(医学部)

・確かに、害虫を根絶させるために「不妊虫放飼法」を使っていくことは我々人間にとってとても利益のあることかもしれない。害虫による作物への被害もなくなれば、人の命を助けてくれるかもしれない。しかし、だからといって生物を殺してしまうことは良くないと思う。人間の利益のためだけに殺すのではなく、より強い作物を作ったり、病気に対して薬を作ったりと他のことに力を注いだ方が良いと思う。(医学部)

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[問題]
[回答集]
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<問3について>
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