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202102,Hino

研究発表を行った学会;第13回日本エピジェネティクス研究会年会
2019年5月28-29日 (横浜市)
タイトル; LSD1は系譜特異的な転写制御を介して白血病細胞の鉄要求性を規定する.
発表者;日野 信次朗氏
(熊本大学 発生医学研究所 細胞医学分野)
要旨;
がん細胞は好気的解糖と呼ばれる解糖系に傾斜したエネルギー代謝特性を示すが、限られた栄養・酸素供給下で最大限の増殖能を得るための戦略であると考えられている。このような代謝転換と形質転換の共役においてエピジェネティクス制御が重要であると考えられる。白血病細胞は細胞系譜や分化度によって多様な性質を示す。近年、正常造血や免疫細胞制御において、代謝リプログラミングが必須の役割を果たすことがわかりつつある。一方で、白血病細胞の系譜に応じた代謝特性獲得やそのエピジェネティックな仕組みについては全くわかっていない。
我々は、細胞の代謝可塑性を司るエピジェネティクス制御の仕組みを解明する目的で、ヒストン脱メチル化酵素LSD1による代謝遺伝子制御について研究を行っている。LSD1はフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)依存性アミンオキシダーゼ活性を持ち、ヒストンH3のリジン残基を脱メチル化することにより遺伝子発現を制御する。我々は、これまでに肝細胞がんや食道がんにおいて、LSD1が好気呼吸抑制及び解糖系促進により好気的解糖を統合的に制御することを明らかにしてきた。
これらの状況を踏まえて、白血病細胞の代謝制御におけるLSD1の役割を検討した。LSD1は急性骨髄性白血病(AML)細胞の特定の病型において高発現しており、解糖系の維持に必須の役割を果たしていることがわかった。また、RNA-seq及びChIP-seqにより、LSD1が細胞系譜維持や分化に関わる遺伝子群と代謝関連遺伝子群を統合的に制御していることを見出した。これらの結果から、LSD1がAML細胞の病型に応じた代謝表現型を形作るエピジェネティクス因子であることが示唆された。

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