研究発表を行った学会;第2回日本放射線安全管理学会 (18th)・日本保健物理学会(52th)合同大会
2019年12月 4日〜 7日(仙台市)
タイトル; 放射線事故時におけるESR/EPR線量計測による低線量被ばく線量評価の検討.
発表者;島﨑 達也氏
(熊本大学 生命資源研究・支援センター RI実験分野)
要旨;
予期せぬ放射線事故の際には、正確な線量評価が不可欠であり、線量が小さい場合でも、線量測定の結果が社会から強く求められることが、東京電力福島第一原子力発電所の事故で改めて示された。ヒトの歯エナメルを用いるESR線量測定法は、個人の集積被ばく線量を求める⽅法として最も適した測定方法の1つである。我々は、被検者より提供された歯エナメルを用いたESR線量測定法を用いる目的で、0.2Gy以下の低線量の被ばく線量推定の可能性について検討を行っている。ESR信号の取り扱いは、比較的高線量(1Gy<)被ばくの場合、被ばくによる線量応答のあるCO2-ラジカル成分のピーク幅により被ばく線量を正確に求めることが可能である。特に福島及び長崎原爆(地上距離2km)で0.1Gy以下と推定される場合、通常のESR測定法では検出限界と考え評価できない被ばく線量である。0.1Gy以下の低線量領域になると歯エナメル有機物に起因する有機ラジカル成分ESR信号がノイズ(バックグラウンド)としてCO2-ラジカル成分ESR信号と重なり正確な被ばく線量を求めることができない。そこで我々は、日本電子社製ESR装置から得られるESRシグナル解析に利用できる「ESR Data Process」、「Isotropic simulation」ソフトを用いて、測定ESR信号より有機成分ESR信号を差し引く解析及びCO2-ラジカル成分・有機成分ESR信号のシミュレーション解析を行うことで、低線量領域の被ばく線量評価が可能であるという結果を得ることができた。有機ラジカルESR信号をフッティング法によりシュミレーションし、サブトラクション法によりCO2-ラジカル信号を分離すると、131Iγ線に対する線量応答は0.05Gy程度、長崎原爆被爆者の抜歯試料0.03-0.01Gyの低線量被ばく評価が可能であった。