研究発表を行った学会;第45回日本分子生物学会年会
2022年11月30日〜12月2日 (幕張メッセ)
タイトル; ダマラランドデバネズミ皮膚線維芽細胞の樹立と細胞死応答の解析..
発表者;鈴木 悠介氏
(熊本大学 大学院医学教育部 老化・健康長寿学講座)
要旨;
寿命や疾患への感受性は生物種によって大きく異なる。近年、老化耐性やがん化耐性といった有用な表現型をもつ非モデル生物種の解析が盛んに行われているが、そうした種に見られる特異形質が実際に有用表現型の制御に関与しているのか、また、どのように獲得されたのかを解明するためには、ある一種の生物種のみの解析から結論するのではなく、近縁種における保存性を検討することが重要である。
ハダカデバネズミ(Naked mole-rat, NMR)は、強い発がん耐性をもつ地下生息性の最長寿齧歯類であり、老化、がん、低酸素関連疾患といった様々な研究領域で注目されている。これまでに、NMRの老化・がん化耐性を規定するとされる種特異的メカニズムが多数報告されているものの、こうした機構が近縁種でも同様に保存されているのか、あるいはNMR独自のものなのかはほとんどわかっていない。当研究室は国内唯一のNMRの飼育・研究機関であるが、昨年度、NMRの近縁種であるダマラランドデバネズミ(Damaraland mole-rat, DMR)を国内で初めて導入し、その飼育・研究を開始した。DMRは寿命20年以上の長寿齧歯類であり、低酸素耐性といったNMRと共通する表現型を持つ。DMRとNMRの比較解析を行うことで、様々な表現型を規定する共通あるいは種独自の機構が明らかになると期待できる。
本発表では、DMRの新たなモデル動物としての可能性について紹介したい。