研究発表を行った学会;日本遺伝学会第93回大会
2021年9月8〜10日 (オンライン)
タイトル;トランスポゾン挿入により異所性発現を誘導するエンハンサー領域の解析。
発表者;徳安 碧氏
(熊本大学 生命資源研究・支援センター 疾患モデル分野)
要旨;
我々はDanforth’s short tail (Sd)マウスについて調べている。Sdマウスは脊椎欠損などの表現型を特徴とする自然発症変異体である。Sd変異アレルでは2番染色体上のPtf1a遺伝子の上流にレトロトランスポゾン(ETn)が挿入されている。このETn挿入により、通常E12.5-E17.5において神経管や膵臓の原基で発現するPtf1a遺伝子が、E9.0-E11.5において神経管で異所性に発現、一度形成された脊索が消失、Sd発症へと至る。しかし、ETn挿入によりどのようにして発現時期・場所が変わるのかは不明である。
我々は特に、Ptf1a遺伝子とETnの上流に存在するPtf1aエンハンサー領域に注目した。この領域内には、PTF1A結合サイトが二か所存在する、CpG islandが二か所存在するなどの特徴がある。CRISPR/Cas9によりエンハンサー全欠損マウスを作製したところ、脊椎欠損の表現型が見られなくなったことから、このエンハンサー領域がSd発症に重要と考え、さらに変異を加えることでエンハンサー領域内のどこが特に重要か、解析を行った。