Gene Technology Center

H23 遺伝子教育研修会・要旨

平成23年度

中学校及び高等学校における

遺伝子教育研修会・講義実習内容

<1日目(8月10日 水曜日)>
(研修1)講義 「DNAと仲良くなろう!」  吉信 公美子

新聞やテレビなどで取り上げられるDNAの話題は・・・ゲノム、DNA鑑定(検査)、DNA診断、遺伝子治療、遺伝子組換え食品など。そして、多くの病気の原因が遺伝子と結びつけて考えられ、また個人の性質も遺伝子が関係していると言われています。日常的に話題に取り上げられるほどDNAが身近になったのは、人間がDNAの性質や仕組みを詳しく知ることができるようになったから、と言えます。DNAは、A・T・G・Cという4種類のヌクレオチドがつながっただけの化合物、なのですが、見事な機構で私たちの生命を支えています。DNAの役割や仕組みとは、一体どのようなものなのでしょうか?この講義は研修会の入り口として、ごく基本的なお話をしたいと思います。

(研修2)講義 「生活習慣病研究の最前線」  尾池 雄一

約50年前の日本人男性の平均寿命は男50.06歳、女53.96歳であったが、『健康で長生き』をスローガンに、我が国での栄養面の改善及び医療の進歩により男79.59歳、女86.44歳(2009年)と飛躍的に向上した。しかし、近年食生活が豊かになり、肥満を代表とする生活習慣病が増加し「肥満は先進国の栄養失調(under-nutrition)」として取り上げられ、地球規模で問題視されるようになってきている。生活習慣病は動脈硬化性疾患発症の危険病態であるため、今後益々脳卒中や虚血性心疾患の発症が増加していくことが予想され、生活習慣病の予防、早期治療が特に心血管病予防の観点から重要であることは明らかである。本講演では、生活習慣病克服へ向けた新規治療薬の開発を目指した我々の基礎医学研究をご紹介する。

(研修3)講義 「なぜ遺伝子組換え技術が必要なのか」  荒木 正健

「遺伝子組換え作物は使用していません。」という言葉を良く聞かれると思います。では、遺伝子組換え技術って、本当に必要なのでしょうか? いったい、何のためにあるのでしょうか? B型肝炎ウイルスに対するワクチン開発やゴールデンライスの話題を例にして、分かりやすく説明します。また、遺伝子組換え生物(Living Modifide Organism: LMO)の取扱に関する国際的なルールである『バイオセーフティーに関するカルタヘナ議定書』と、その的確かつ円滑な実施を確保することを目的とした『遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律』について、中学・高等学校の理科実験室でも実施できるLMOの第二種使用(P1レベル)を中心に紹介します。
(研修4)講義と実習 「DNAを見てみよう!」  *実習担当者

DNAを精製する方法として最も簡単で、頻繁に行われている「エタノール沈殿」を行い、DNAを肉眼で観察します。

(研修5)講義と実習 「遺伝子組換えで光る大腸菌を作ろう!」  *実習担当者

中学校や高等学校の理科実験室でも実験できる、熊本大学発の実験キット”PIKARIキット”を使用して、オワンクラゲの緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子を組み込んだプラスミドDNAを大腸菌に導入し、形質転換させます。キット付属のプロトコールに沿って操作方法を説明し、コロニーの出方やGFP蛍光の観察によって、遺伝子発現の仕組みや遺伝子組換えの意義を考えます。

<2日目(8月11日 木曜日)>
(研修6)講義と実習 「光る大腸菌を観察しよう!」   *実習担当者

研修5の続きです。37℃の恒温器(インキュベーター)で一晩培養した大腸菌コロニーを観察します。大腸菌、プラスミドDNAおよび培養に用いた培地成分の組み合わせにより、コロニーの数およびブラックライトで照らしたときのコロニーの見え方を比較します。

(研修7)講義と実習 「光るマウスを観察しよう!」  荒木 喜美

大腸菌で働くオワンクラゲのGFP(Green Fluorescent Protein)遺伝子は、マウスでも同じ様に働きます。そうです。光るマウスが作れるのです。でもペットとして飼うために作る訳ではありません。例えば光るマウスの骨髄から取り出した造血幹細胞(赤血球や白血球の元になる細胞)を普通のマウスに移植すると、移植した細胞がきちんと働いているかどうかを生きたまま観察することが出来ます。この講義では、発生研究や再生医療等、生命科学の分野で大活躍している光るマウスの話題を紹介し、実際に光るマウスをお見せします。
(研修8)講義 「医学領域で貢献する動物達」  浦野 徹

健康で心豊かな生活を過ごす事は多くの人の望みであるが、私達人間はこれを実現するために動物達の力を借りている、いや、動物達の力なくしては実現できないと言えるであろう。すなわち、1)家畜を食べての食生活、2)ペットから得られる精神的な安らぎ、3)実験動物を用いての研究成果から得られる健康的な生活等である。第三の実験動物は医学領域での話しで、実験に用いられる動物の種類としてはマウス、ラット、ウサギ等の他に、最近は遺伝子機能を解析するために作出した遺伝子改変動物など様々である。成人病、感染症、神経疾患、癌等の病気で苦しむ患者さんを救うために、そして医薬品、化粧品、食品添加物等の安全性を調べて安全な暮らしを確保するために、これらの実験動物達が大きな役割を果たしている。

(研修9)講義 「これって遺伝?〜正常形質の遺伝に関するはなし〜」  要 匡

1865年にG.J.メンデルがBrno自然協会で「メンデルの法則(遺伝粒子の概念)」を発表するより遥か昔、ヒポクラテスの時代から「子が親に似る」ことはよく知られており、なぜ似るのか、何が似るのか、という疑問から人類遺伝学の歴史は始まりました。

そして人類遺伝学は、例えば、まぶたの一重、二重など、経験的に遺伝するのでは、と思われていた形質の詳細を、科学的に明らかにしてきました。

本講義では、昔から知られている、有名な「遺伝」する身近な性質(形質)、血液型、耳あかの型や味覚などについて、見つかった経緯や遺伝子発見の歴史についてお話ししたいと思います。

(研修10)講義と実習 「遺伝子を増やしてみよう!」  *実習担当者

PCR(Polymerase Chain Reaction;ポリメラーゼ連鎖反応)という技術は、生命工学の世界に驚異的な進歩をもたらしました。PCRを用いると、目的のDNAの一部を短時間で何万倍にも増幅することができます。PCRは、研究だけでなく、遺伝子検査、親子鑑定、食品検査、犯罪捜査などにも力を発揮し、今や欠かせない技術となっています。この技術の原理を解説し、実際にGFP遺伝子を増幅、電気泳動によって検出します。

<3日目(8月12日 金曜日)>
(研修11)講義と実習 「遺伝子の電気泳動と観察」  *実習担当者

研修10でPCR反応を行いましたが、目的のDNA断片が増幅していることをどうやって確認するのでしょうか?それは電気泳動という方法で可能になります。この原理について解説し、PCR産物のアガロース・ゲル電気泳動を行います。泳動後、アガロース・ゲルに紫外線を照射することにより、DNA断片を観察します。

(研修13)グループディスカッション
「中学校及び高等学校における遺伝子教育」  崎村 奈央

「遺伝子」は目に見えないため,生徒から見れば神秘的な存在かもしれません。遺伝子は物質であり化学反応するため,GFPを大腸菌に挿入する実験では挿入した遺伝子が機能した(化学反応した)結果を目で確認することができます。したがって遺伝子のはたらきを学ぶのによい教材といえるでしょう。この実験が,ただ単に「光る大腸菌ができた」で終わらせるのはもったいないと思います。私は,この遺伝子組換え技術の背景に何があるのかを教え,この技術を使って何ができるかを生徒に考えさせるきっかけにしたいと考えます。そのために教員は何をすべきでしょうか。教員の立場から考えると,実験を行うに当たり様々な問題点もあると思います。今回の講義では,私が高等学校で遺伝子組み換え実験を行う際に何をしているかを講演し,それからそれぞれの学校でこの実験を行うための問題点とその解決策をグループディスカッションで考えていきます。

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