『小型モデル生物を用いた希少・未診断疾患遺伝子の機能解析』
国立遺伝学研究所 人類遺伝研究室 教授
井ノ上 逸朗
AMEDのIRUDプロジェクトにより膨大な数の希少・未診断疾患の遺伝子解析が検討され、多くの候補遺伝子が同定されている。ただしこれらのアプローチのみでは疾患の希少性のため原因同定かつ確定診断は困難である。そこで遺伝子機能およびコードされたタンパク質の機能に対する変異の影響を予測するといった機能解析を実施し、確定診断をめざす必要がある。IRUDを補完する目的で私どもは小型モデル生物で疾患遺伝子を解析するJ-RDMM (Japanese rare disease models and mechanisms network) を開始した。モデル動物(あるいはモデル生物)研究者は豊富で詳細な生物学的情報を提供することができるので、医療研究コミュニティにおけるこのような課題を克服できる可能性がある。候補遺伝子の中から、真の原因となる遺伝子を見つけ出し、迅速に患者の診断・治療にフィードバックするためには、候補遺伝子の迅速でハイスループットな機能解析のシステム構築が不可欠である。そこで、対象となるモデル生物は、(1)ハイスループットな遺伝子機能解析が可能であること、(2)生物学的知見が集積していること、が必要条件となり、ゼブラフィッシュ、ショウジョウバエを中心に研究を進めている。それらのモデル生物を用いて、遺伝子および遺伝子ファミリーの機能解析を行うことにより、特定の臓器における機能や生物学的機能を明らかにすることができる。もちろん、ヒトとモデル生物ではその生物学的特性も大きく異なる。モデル生物の特徴についての深い洞察が不可欠である。昨年度までで112遺伝子について解析されており40変異についてloss of function、5変異についてgain of functionを得ている。