Gene Technology Center

第179回遺伝子技術講習会

第179回遺伝子技術講習会

『in silico 生命科学と医学研究の展開』

【日 時】 2020年 1月24日(金)14:00〜15:00

【場 所】 熊本大学 生命資源研究・支援センター 遺伝子実験施設 6階 講義室 [602]

【講 師】
神戸大学 医学部附属病院 医療情報部 准教授・副部長
神戸大学 医学部附属病院 診療録センター 副センター長
熊本大学 生命資源研究支援センター ゲノム機能分野 客員准教授

髙岡 裕 先生

【内 容】
【背景】がん化学療法の有効性は、抗がん剤の(1)薬物代謝、(2)薬効(感受性)から評価可能であるが、未知の新規遺伝子変異の場合は評価が困難になる。現在、抗がん剤イリノテカン投与前には薬物代謝酵素のUGT1A1の遺伝子検査が必須であるが、UGT1A1の遺伝子多型が抱合能を低下させるためである。すなわち、プロモーター領域の変異ではUGT1A1の量的減少が、アミノ酸変異では質的劣化が抱合能を低下させる。今回UGT1A1のアミノ酸変異をモデルとして、分子シミュレーション解析と数理モデルにより、薬物代謝能予測を可能にした。
【方法】変異体の立体構造は、正常型ヒトUGT1A1の立体構造(ModBase Model ID: 2420a568b0f3d1b1fe06fc34a94eee40)のアミノ酸置換(G71R, F83L, P229L, P229Q, L233R, I294T, I322V, R336L, H376R, P387S, N400D, W461R) 後に、MOEとNAMDソフトウエアで構造最適化し決定した。決定した立体構造の妥当性を確認した後に、補酵素(UDPGA)と基質(AAP, E2)のドッキング解析をAutoDockプログラムで行い、基質結合の向き(Takaoka et al., J Biochem 148, 25-28, 2010)を集計した。そして、それらの値を代入することで、抱合能を予測可能にする数理モデル(特許第5447383号)を、in vitro実験結果も用いて導出した。最後に、ビリルビンとSN-38を基質とした場合の抱合能の予測値(in silico抱合能)を求め、既報のウエット実験結果等と比較した。
【結果・考察】in silico抱合能はin vitro抱合能を高い精度(R > 0.9)で予測できており、薬物有害反応予測に用いることが可能であった。現在、分子標的薬の標的分子(EGFR)の変異を対象に、薬効不明な変異EGFRの薬効評価を可能にすべく、同様の研究を進めている。本講演では、上記に加えて幾つかの解析例を示し、分子シミュレーション解析の有用性について紹介したい。

PLOS ONE 14(11): e0225244., doi:10.1371/journal.pone.0225244, 2019

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