腎臓糸球体足細胞におけるMafBの機能解析とヒト疾患
筑波大学医学医療系 トランスボーダー医学研究センター/生命科学動物資源センター
センター長 高橋 智
Large Maf転写因子群は、酸性領域、塩基性領域とロイシンジッパー領域を有する転写因子で、ヒト及びマウスでは、MafA、MafB、c-Maf、NRLの4種類存在することが知られている。我々の研究グループは、Large Maf転写因子群の生体における機能を明らかにする目的で、MafA、MafB、c-Mafのそれぞれの遺伝子改変マウスをCRISPR/Cas9によるゲノム編集技術で作製し、その表現型を解析した。その結果、MafBが、腎臓の足細胞の機能発現、膵臓内分泌細胞の発生、内耳の形成、マクロファージの機能分化に必須の転写因子であることを明らかにした。一方、MafBの変異により、ヒトにおいて進行性の腎疾患である巣状糸球体硬化症(FSGS)が発症することが報告され、ヒトに同定された変異を導入することにより、マウスにおいてもヒトと同様の病態を発症することを明らかにした。
本セミナーでは、MafBの腎臓糸球体足細胞における機能とヒト疾患との関連についてお話ししたい。
参考文献
1. Tsunakawa Y, et al. Mice harboring an MCTO mutation exhibit renal failure resembling nephropathy in human patients. Exp Anim. 2019 Feb 26;68(1):103-111. doi: 10.1538/expanim.18-0093.
2. Sato Y, et al. MafB mutation causes Focal Segmental Glomerulosclerosis with Duane Retraction Syndrome. Kidney Int. 2018 Aug;94(2):396-407. doi: 10.1016/j.kint.2018.02.025.
3. Morito N, et al. Mafb plays a protective role in diabetic nephropathy through slit-diaphragm proteins, anti-oxidative enzymes and Notch pathways of podocytes. J Am Soc Nephrol. 2014 Nov;25(11):2546-57. doi: 10.1681/ASN.2013090993.