*GTC On Line News No.480 (2004年3月4日)で配信した内容です*
御存知の通り、2004年2月19日付けで「組換えDNA実験指針」が法制化され、違反した時は、場合によっては1年以内の懲役若しくは100万円以内の罰金が科されることになりました。しかしながら、その法律等の中身まで良く知らないという方が多いのではないでしょうか。そこで、これから数回に分けて、『遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律』(以下、規制法と略 記)等の概要を紹介します。(文責;荒木正健)
=== 遺伝子組換え生物等規制法について・Part1 ===
〜〜〜 「カルタヘナ議定書」とは何か 〜〜〜
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遺伝子組換え生物等による生物多様性への影響を防止するため「生物の多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書」(以下、議定書と略記)が2000年1月に採択されました。2003年6月には、議定書の発効に必要な50カ国が締結し、3ヶ月後の2003年9月に議定書が発効しました。日本も、議定書を締結するために必要な法律を議定書とともに2003年3月に国会に提出し、2003年6月に法律が成立し、公布されました。
さて、この議定書の目的は、遺伝子組換え生物等(Living Modified Organism; LMO)の使用による生物多様性への悪影響(人の健康に対する危険も考慮したもの)を防止することです。ここで言うLMOとは、「細胞外核酸加工技術又は異なる分類学上の科に属する生物の細胞融合により得られる遺伝素材の組合せを有する生物」で、ウイルス及びウイロイドを含みます。ただし、ヒトの細胞等は除外されます。また、自然条件において個体に成長しないものも除外されます。つまり、動物の組織片や培養細胞などはLMOに含まれません。例えばマウスのES細胞は、そのままではLMOに含まれません。しかしながら、ブラストシストインジェクションなどで作製 したマウスキメラ胚はLMOになります。
次に、議定書で求めている主な措置を列記します。
(1)環境中で利用するLMOの最初の輸出者又は輸出国は、輸入国に対して事前に 通告。輸入国は、通告による情報を踏まえ、リスク評価を実施し、輸入の可否を決定 (事前通告手続;AIA手続き)。
(2)締結国は、最初の輸入に際してのリスク評価の実施を確保するとともに、リス ク評価により特定されたリスクを規制し、管理し、制御する制度を確立。
(3)締結国は、LMOの拡散防止措置の下での利用について基準策定が可能(基準に従って取り扱われる場合にはAIA手続きの適用を除外)。
(4)締結国は、輸出されるLMOについて、安全な取扱い、包装及び輸送並びに必要な情報を表示した文書の添付を義務付け。
この議定書の内容に添った形で「組換えDNA実験指針」が法制化された訳です。 それでは、次回から、実際にどのような法律等が整備されたのかを紹介します。