研究発表を行った学会;第51回 酵母遺伝学フォーラム 研究報告会
2018年 9月10日〜12日(福岡)
タイトル; 分裂酵母イントロンデブランチング酵素Dbr1pはDNA修復に関与する.
発表者;原 朋也氏
(熊本大学 大学院自然科学教育部 理学専攻 谷研究室)
要旨;
真核生物の遺伝子発現過程において、pre-mRNAからイントロンを取り除き、前後のエキソンを連結させるスプライシング反応は極めて重要な反応である。スプライシング反応によりpre-mRNAから切り出されたラリアット型イントロンは、デブランチング酵素Dbr1pにより直鎖状RNAとなり、その後モノヌクレオチドへと分解される。
我々は、Dbr1pの生体内における機能を解明するため、dbr1遺伝子を欠損した分裂酵母株(∆dbr1株)を作成した。その結果、∆dbr1株ではラリアット型イントロンが蓄積することの他に、スプライシング反応の第一段階に阻害がかかることが示された。
また、最近、DNA修復反応に関与するPrp19複合体に存在するXab2とDbr1pが相互作用することが示された(Masaki S, et al., Int J Mol Sci, 2015)。そこで、分裂酵母Dbr1pがDNA修復反応において機能する可能性を検討した。その結果、興味深いことに、∆dbr1株はDNA二本鎖切断(double strand break : DSB)を誘発する化合物Bleomycinに対して、高感受性を示すことが明らかとなった。また、DNA二本鎖切断修復経路のうち、非相同末端結合(non homologue end joining : NHEJ)において機能するPku70pとDbr1pとの二重変異株∆dbr1∆pku70株が∆dbr1株の示すBleomycin高感受性を抑圧すること、相同組換え(homologue recombination : HR)において機能するRad51pとDbr1pとの二重変異株∆dbr1∆rad51株が高Bleomycin感受性を示すことが示された。これらのことから、Dbr1pはPku70pと機能的な関連性を持つこと、つまりDbr1pがNHEJによるDNA修復反応に関与する可能性が示唆された。
現在、Dbr1pがNHEJによるDNA修復経路でどのように機能しているか更に解析を進めているので、その結果を報告する。
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