研究発表を行った学会;
平成29年度先端モデル動物支援プラットフォーム成果発表会
2019年 1月30日〜31日(琵琶湖ホテル)
タイトル;潜性(劣性)遺伝形式で多血症の症状を示す自然発生突然変異マウス『pocy』の解析.
発表者;北元 優梨氏
(熊本大学 生命資源研究・支援センター ゲノム機能分野)
要旨;
我々は、『可変型遺伝子トラップ法』を開発し、データベース『EGTC (Exchangeable Gene Trap Clones)』を全世界に公開している。EGTCクローンの中のAyu21-W267というトラップマウスの解析中に、トラップベクターの有無とは関係なく、脚や耳の中が赤いマウスが出現した。血液検査の結果、このマウスは血中の赤血球が異常に増加する多血症を発症していることが分かった。我々はこの自然発生突然変異マウスをpocy (Familial Polycythemia)と名付けた。家族性多血症は多くが顕性(優性)遺伝であるが、pocyにおける多血症は潜性(劣性)遺伝形式を示し、これまで知られていなかった新たな多血症である可能性が高い。本研究の目的は、pocyの表現型を詳細に解析し、またpocyの責任遺伝子を同定し、新たな多血症の原因を解明することである。
昨年の本発表会において、主にpocyの表現型とその発見の経緯について紹介した。今回は、詳細な血液検査の結果と責任遺伝子の探索結果について報告する。
多血症の責任遺伝子を調べるために全遺伝子のエクソーム解析を行い、pocy特異的な変異を18個検出した。また、pocyをC57BL/6Nと交配し、ヘテロ接合体の状態にした後、改めてホモ接合体(pocy2)を作製して、候補遺伝子の絞り込みを行った。さらにAyu21-W267 ES細胞及びその親株であるKTPU8 ES細胞のDNAを解析することで、候補遺伝子を2つに絞り込むことができた。文献情報も含めて、このうちの一つが多血症の原因であると予想し、ゲノム編集技術でC57BL/6Nマウスにその変異を導入した。今後、ホモ接合体マウスを作製し、pocyの表現型が再現されるかどうかを検討する。
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