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201804yoshida

研究発表を行った学会;
第59回日本先天代謝異常学会総会
2017年10月12日〜14日(埼玉県川越市)
タイトル;ムコ多糖症Ⅰ型及びⅡ型における新生児スクリーニングパイロット研究.
発表者;吉田 真一郎 氏
(熊本大学 大学院生命科学研究部 小児科学分野、
一般財団法人 化学及血清療法研究所 臨床検査センター)
要旨;
【背景】
今回、2016年開発した2項目同時迅速スクリーニング検査法を用い、ムコ多糖症Ⅰ型及びⅡ型に対する新生児スクリーニングにおけるパイロット研究を2016年12月より開始した。その途中経過を報告する。
【方法】
対象
熊本大学医学部附属病院と当計画に協力可能な熊本県内の医療機関で、同意書による保護者のインフォームドコンセントが得られた新生児。
方法
現行の新生児マススクリーニング検査の足底からの採血濾紙を使用。試料は乾燥後、熊本大学医学部附属病院小児科に送付。MPSⅠ及びMPSⅡ診断のため、酵素活性測定法により各々IDU及びIDSを測定。異常値が認められた場合、担当者から医療機関を通して保護者へ連絡し、熊本大学医学部附属病院小児科を受診させ、診断のための精密検査及び必要な治療を行う。
酵素活性測定乾燥血液ろ紙よりφ3.2mmのディスク(検体)1枚を96wellマイクロプレートの各wellに切り出し、抽出液200μLを添加、室温で振とうしながら1時間の抽出操作を実施。抽出された血液試料を20μLずつ2枚の96wellマイクロプレートに移注(一つの抽出液から2つの疾患検査用に2プレートへ区分移注)した。検体が入ったwellにそれぞれの基質20μL添加し、38℃、3時間反応をさせた後、200μLの反応停止液を添加し360nm、検出波長450nmで蛍光強度を測定、 酵素活性を求めた。カットオフについては患者検体結果等考慮し設定、検査運用を行った。
【結果】
2016年12月から2017年8月末までで11,935件について検査実施した。ムコ多糖症Ⅰ型では再採血が24名、再採血検体で要精密検査対象と1名が判定された。ムコ多糖症Ⅱ型では再採血が8名、再採血検体で要精密検査対象と5名が判定された。要精密検査となった児について、ご家族の同意を得て次世代シーケンサーを用い疾患責任遺伝子であるIDUA及びIDSの配列解析を行った。その結果、ムコ多糖症Ⅰ型要精密検査児にはH33Q、ムコ多糖症Ⅱ型要精密検査児にはP284LおよびT500Iが確認された。
【考察】
H33Qは文献等より病的変異ではないと考えられた。T500Iも既知の病的変異ではない。P284Lは病因変異ではなくPseudodeficiencyと考えられている。いずれの精密検査対象者も、尿中ウロン酸の排泄増加は確認されておらず引き続き経過観察中である。
【結論】
熊本県全体を対象としたMPSⅠ型及びⅡ型の新生児スクリーニングのパイロット研究を実施した。精密検査対象者はMPSⅠで1名、MPSⅡで5名であったが、いずれも病的変異は確認されていない。研究継続し、日本人における疾患頻度やPseudodeficiencyの 頻度などの調査が必要である。また、DBSおよび血液での酵素活性値、精密検査結果、疾患責任遺伝子における保有バリアント情報及びその後の臨床情報を統合、蓄積することで将来、診断や治療開始の判断に有用な知見を提供することが可能となることが期待される。

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