Gene Technology Center

201901Yamaguchi

研究発表を行った学会;公益財団法人 東京生化学研究会 平成29年度 助成研究報告会
2018年 3月 2日(東京)
タイトル; がん細胞でのROR1による生体膜ダイナミクス制御機構の解明.
発表者;山口 知也氏
(熊本大学 大学院生命科学研究部がん生物学分野)
要旨;
 これまでの研究により、私たちはリネジ生存癌遺伝子であるTTF-1によって転写活性化されるROR1が、EGFRからの肺腺癌の生存シグナルの維持に必要な受容体型チロシンキナーゼ(RTK)であることを見出し、またROR1がカベオラ形成を安定化させ、カベオラに集積するMETやIGF-IR等の様々なRTKの活性化の維持に寄与することで、肺腺癌にとっての重要な生存シグナルを担うことを明らかにした。
 そこで本研究では、受容体としてのROR1の新たな機能に着目し、がん細胞における生体膜ダイナミクスとして多くの謎に包まれてきた細胞膜でのカベオラの詳細な生理機能の解明を目的とした。
 今年度の研究の遂行によって、肺がん細胞におけるこれまでに報告のない新たな分子機序を介したカベオラ依存的なエンドサイトーシス制御機構が明らかとなった。肺腺癌細胞では、カベオラからのエンドソームの小胞移動に関わるCAVIN3とROR1が直接結合し、細胞膜からのエンドサイトーシスを制御し、ROR1はCAVIN3を介してMYO1Cと相互作用することでアクチンフィラメント上を移動することが判明した。また、ROR1とCAVIN3の結合はCAVIN3の適切な細胞内局在に必須であるが、カベオラ形成そのものには影響を与えないことが分かった。さらに、肺腺癌細胞において、ROR1とCAVIN3の相互作用はEGFやIGF-Iなどのリガンド刺激によるPI3K-AKTシグナルをカベオラ依存的なエンドサイトーシスによって生じた初期エンドソームにおいて厳密に制御していることが明らかとなった。
 本研究により、これまでROR1は細胞膜上のカベオラにおいて生存シグナルを担っていると考えられてきたが、エンドサイトーシスによって生じたシグナリングエンドソームにおいて様々なアダプター蛋白質をリクルートし、肺腺癌細胞の生存シグナルを経時的及び、空間的に制御していることが判明した。また、本研究の成果は、ROR1とエンドサイトーシスに関わるCAVIN3との相互作用を標的とした、これまでにない肺腺癌の生存シグナルを特異的に抑える独自性の高い革新的な阻害剤の開発につながると期待される。

アクティブボード

PAGETOP
Copyright © GTC All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.