研究発表を行った学会;2023年度先端モデル動物支援プラットフォーム成果発表会
2024年2月8日〜9日(大津市、琵琶湖ホテル)
タイトル; 雌特異的な減数分裂制御機構解明に向けたCCDC201の解析.
発表者;飯阪 早希絵氏
(熊本大学 発生医学研究所 染色体制御分野)
要旨;
減数分裂のプログラムには雌雄で異なる制御がある。精巣では生涯にわたって断続的に減数分裂への進行が繰り返される。一方、卵巣では胎児期の限定された時期に減数分裂が開始され、その後減数第一分裂前期の途中で一時停止する。卵母細胞は長期の休眠時期を経た後、排卵によって減数第一分裂を再開する。卵子休眠のメカニズムは、減数分裂の制御機構における雌雄性差の理解において重要な問題であるが、未だ不明な点が多い。
減数分裂開始における雌雄共通のメカニズムとして、STRA8とMEIOSINが減数分裂関連遺伝子群の転写活性化に働くことがわかっている(Ishiguro et al., Dev Cell, 2020)。さらにこの仕組みに加え、我々は最近、メス生殖細胞の減数分裂開始ではpre-meiotic S期への進行にSTRA8とRetinoblastoma(RB)タンパクとの相互作用が関与することを明らかにした (Shimada et al., Nat Commun, 2023)。RBとの結合モチーフを欠失させたStra8(STRA8∆RB)変異マウスでは、メス特異的にpre-meiotic S期への進行と減数分裂のエントリーが遅延する。さらに、遅れて減数分裂にエントリーしたSTRA8∆ RB卵母細胞は、一見正常に減数第一分裂前期を進行するかのように見えるものの、ディプロテン期にさしかかる頃に休眠に入ることなく一斉に死滅してしまう。しかしながらSTRA8-RB相互作用と卵子の早期枯渇とを関係づける遺伝学的要因は不明である。
そこで胎生期14.5日から18.5日の卵巣より分離した卵母細胞のscRNA-seqにより、①オスではなくメスの減数第一分裂前期で特異的に発現を示す、②変異型STRA8∆ RBマウスの卵母細胞において発現低下を示す、③減数分裂停止中の卵母細胞において発現上昇を示す、以上の基準を満たす遺伝子をスクリーニングした。その結果、卵子の早期枯渇に関与する候補遺伝子としてCcdc201を同定した。興味深いことにCcdc201はオス生殖細胞では発現しておらず、卵母細胞特異的に減数第一分裂前期で発現を示した。
卵子発生におけるCcdc201の役割を明らかにするために胎児期卵巣の生殖細胞におけるCCDC201の細胞内局在を解析した。CCDC201は、卵母細胞の減数第一分裂前期の中盤以降にシナプトネマ構造に局在することが示唆された。一方、精母細胞のシナプトネマ構造にはCCDC201は見られない。これまでメス特異的に減数第一分裂前期の染色体構造に関与する因子は知られていない。Ccdc201のKOマウスの表現型を解析しCCDC201の機能を明らかにしていくことで、卵子休眠メカニズムの解明につながるメス特異的な減数分裂の制御機構の解明が期待される。
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