研究発表を行った学会;
第31回モロシヌス研究会
2018年6月22日〜23日(北海道大学、札幌)
タイトル;潜性遺伝形式を示す自然発生突然変異多血症モデルマウス『pocy』の解析.
発表者;北元 優梨氏
(熊本大学 生命資源研究・支援センター ゲノム機能分野)
要旨;
我々は『可変型遺伝子トラップ法』を開発し、データベース『EGTC』を全世界に公開している。EGTCクローンの中のAyu21-W267というトラップマウスの解析中に、トラップベクターの有無に関係なく、皮膚の赤いマウスが出現した。皮膚が赤いのは多血症を発症しているためであると考え、我々はこの自然発生突然変異マウスをpocy (Familial polycythemia)と名付けた。家族性多血症は多くが顕性遺伝であるが、pocyにおける多血症は潜性遺伝形式を示し、これまで知られていなかった新たな多血症である可能性がある。
Pocyの表現型を観察した結果、皮膚の赤みは生後8〜10週で最も強くなり、それ以降薄れていった。また、生後10〜12週で突然死するものが多いという表現型も見られた。Pocyでは、一度毛が抜けた後再び生えそろう発毛異常も見られた。
血液検査の結果、pocyでは野生型マウスと比べ、赤血球数、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値が増加していた。
次世代シークエンサーを用いて、pocy特異的な変異を持つ責任遺伝子を検出したところ、pocyにおける多血症の原因としてX遺伝子の一塩基置換が上がった。この変異を検出するPCRを行ったところ、すべてのpocyにおいて変異はホモであることがわかった。