Gene Technology Center

201812Miyamoto

研究発表を行った学会;第41回日本分子生物学会年会
2018年11月28日〜30日(横浜)
タイトル; 筋分化、及び筋再生過程におけるThymosin β4の機能解析.
発表者;宮本 郁氏
(熊本大学 大学院自然科学研究科 中山研究室)
要旨;
 Thymosinβ4 (Tβ4) は、筋萎縮調節候補因子の一つとしてデュシェンヌ型筋ジストロフィーのモデル動物であるmdxマウス筋芽細胞株で同定された遺伝子の一つである。Tβ4は、水溶性の小さなペプチドで、赤血球を除く全ての細胞と組織に存在しており、細胞外分泌のためのシグナル配列を持たず、損傷を受けた組織から放出されると考えられている。さらに、Tβ4による皮膚や心筋などでの修復促進が報告されており、Tβ4は新規の創傷治癒薬として期待されている。骨格筋再生におけるTβ4の効果もこれまでに研究が行われており、筋再生時にTβ4mRNAの発現が一過的に上昇し、再生中の筋線維と間質に存在する炎症性血液細胞に発現すること、筋芽細胞の走化性を促進することが分かっている。また、マウス腹腔内にTβ4を投与し筋損傷を与えることで、再生筋の出現が早くなり、筋分化マーカーの発現が上昇したことから、筋再生が促進されることが示唆された。さらにTβ4がマクロファージの損傷部位への動員を促進すること、筋芽細胞の増殖や分化に関与するサイトカインの発現を上昇させることが確認された。しかし、Tβ4腹腔内投与による筋再生の促進は、Tβ4が筋細胞に直接働きかけることによるものなのか、あるいはマクロファージを介したものなのかはまだ明らかでない。
 本研究では、筋分化へのTβ4の直接的な機能解析を目的としている。Tβ4はin vitroでは筋芽細胞の分化を抑制することが示唆された。また、Integrin linked kinase (ILK) の核画分での発現量を調べたところ、Tβ4により核での発現量が上昇することが明らかになった。ILKはTβ4により活性化され、活性化したILKは筋分化を抑制することが報告されている。これらのことから、筋分化においてTβ4は直接的には抑制に働き、ILKを介して働く可能性が示唆された。さらに、マウス前脛骨筋内にTβ4を投与し筋損傷を与えると、筋再生が抑制され、ILKの発現も変化することが明らかになった。今後は、筋分化時のILKの作用機序をより詳しく解析することで、筋分化におけるTβ4の機能を更に解明していく予定である。

アクティブボード

PAGETOP
Copyright © GTC All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.