研究発表を行った学会;
第41回日本分子生物学会年会
2018年11月28日〜30日(横浜)
タイトル;マウスゲノムにおける遺伝子および転写産物の存在しない領域に集積するトラップクローンの探索.
発表者;齋藤 桂花氏
(熊本大学 生命資源研究・支援センター ゲノム機能分野)
要旨;
我々は「可変型遺伝子トラップ法」を開発し、データベース 「EGTC (Detabase for the Exchangeable Gene Trap Clones)」を公開している。トラップした遺伝子のアノテーションを行う過程において、遺伝子の存在が確認できず、転写産物も確認できないが、トラップクローンが数多くマップされている領域を発見し、このような領域を『TCAA』(Trap Clone Accumulated Area)と呼ぶことにした。
EGTCも加入しているIGTC (International Gene Trap Consortium)のクローンがトラップした遺伝子の位置が記録されているUCSC Genome Browser on Mouse July 2007 (NCBI37/mm9)を用いて、染色体1番・4番・11番・18番・XのTCAA領域のデータベース化を行った。また、TCAA領域にはプロモーター活性のみがあると考え、TCAA領域の両隣に位置する遺伝子について、遺伝子の転写開始位置からTCAA領域までの距離、およびブラストシストにおける発現の頻度を調査した。また、染色体1番から遺伝子やトラップクローンが存在しない領域を無作為に選び、対照とした。
その結果、TCAA領域の両隣に位置する遺伝子は、対照と比べて明らかにブラストシストにおける発現の頻度が高いことがわかった。TCAA領域がプロモーター活性のみを持っていることやES細胞で発現している可能性が高いことから、TCAA領域はクロマチン構造をオープンにする役割を持っている可能性が示唆された。また、両隣遺伝子の転写開始位置からTCAAまでの距離が小さいほど、ブラストシストにおけるTPMの値が大きい傾向がみられた。今後は全ての染色体におけるTCAA領域の調査を目指すとともに、TCAA領域が存在する理由の解明を目指していく。