研究発表を行った学会;オリジナルデータ
タイトル; ES細胞から造血性内皮細胞への効率的な分化誘導法.
発表者;鶴田 真理子氏
(熊本大学 発生医学研究所 組織幹細胞分野)
要旨;
脊椎動物の個体発生において造血幹細胞は背側大動脈の造血性内皮細胞から分化する。造血性内皮細胞は血液細胞への分化能を有する内皮細胞であり、マウスの胎仔においてCD45-VE-cadherin+CD41+(45-V+41+)細胞として同定されているが、その詳しい発生メカニズムはわかっていない。本研究ではin vitroでマウスES細胞から造血性内皮細胞を分化誘導しその発生メカニズムを解明することを目標としている。これまでES細胞をOP9細胞層上で平面的共培養すると造血性内皮細胞を誘導できることが知られているが、必ずしも分化効率が高くない。一方、ES細胞より誘導したFlk1+中胚葉細胞とOP9細胞を凝集させて培養すると血球分化が起きることが報告されている。しかし、この血球分化が造血性内皮細胞を介しているのか不明であった。そこで、中胚葉細胞とOP9細胞の共凝集培養により造血性内皮細胞が分化するか解析したところ、V+41lowおよびV+41high細胞の2種類の細胞集団が検出された。平面的共培養よりも共凝集培養の方がV+41+細胞の頻度が10倍高かった。共凝集培養の2種類の細胞集団はどちらも赤血球・骨髄球系細胞およびT細胞分化能を有する造血性内皮細胞であると確認された。興味深いことに、この2種類の造血性内皮細胞の間で肥満(マスト)細胞分化能に大きな差があった。これまでの報告では、卵黄嚢の内皮細胞は培養によりマスト細胞分化能を有する一方、胎仔の内皮細胞は有していないとされている。しかし、胎仔の造血性内皮細胞もマスト細胞分化能を持つことを今回明らかにし、マスト細胞分化能をもとに造血性内皮細胞を胎仔型および卵黄嚢型に分類できないことが分かった。本研究において、ES細胞より誘導した中胚葉細胞とOP9細胞による共凝集培養により効率的に造血性内皮細胞を分化誘導できるが、生体内の造血性内皮細胞と分化能力において違いがあることが示された。
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