研究発表を行った学会;第42回日本分子生物学会年会
2019年12月3日〜6日(福岡)
タイトル; HeLa細胞の核分葉化に関与するRNA結合タンパク質YB-1の機能解析.
発表者;川端 大輝氏
(熊本大学大学院 自然科学教育部理学専攻 生物科学コース 谷研究室)
要旨;
真核細胞の核は一般的に球形または楕円形の形態を示す。一方で、ATL(成人T細胞白血病)や早老症などの疾患患者の細胞では異形核が、分化した好中球細胞では分葉核が観察される。しかし、核の形態がどのようにして決まり維持されているか、その詳細な機構については不明な点が多く残されている。
我々は、放線菌培養上清ライブラリーを用いたPcG body形成阻害化合物のスクリーニング過程において、HeLa細胞の核形態を短時間で大きく変化させる活性化合物としてTeleocidin A1を同定した。HeLa細胞をTeleocidin A1で処理すると、処理後30分から核形態が変化し、分葉核が観察された。Teleocidin A1 はProtein Kinase C (PKC)を活性化することが知られているため、PKCの阻害剤として知られている Staurosporineで処理したこところ、分葉核を生じる細胞の割合が著しく減少した。このことから、核形態変化がPKCの活性化を介したものである可能性が考えられた。我々はPKCの下流の候補因子として現在までに、分裂期における中心体成熟に関与するYB-1を同定した。
解析の結果、Teleocidin A1処理によって、YB-1の細胞質におけるリン酸化が亢進し、核の陥入部位で中心体との共局在が観察された。また、YB-1の102番目のセリンのリン酸化を特異的に阻害すると報告されているFisetiで処理すると、Teleocidin A1による核の分葉化が著しく抑制された。さらに。YB-1-KD細胞では、Teleocidin A1による核の分葉化が著しく抑制され、YB-1過剰発現細胞では、Teleocidin A1非依存的に核の分葉化が誘導された。一方、YB-1の102番目のセリン変異体過剰発現細胞では、核の分葉化は誘導されなかった。これらのことから、YB-1の102番目のセリンのリン酸化が核の分葉化を引き起こす引き金となること、YB-1過剰発現による量的な変化が核の分葉化を誘導することが示唆された。
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