研究発表を行った学会;36th International Mammalian Genome Conference
2023年3月29-31日 (つくば市/オンライン ハイブリッド開催)
タイトル; 熊本大学生命資源研究・支援センター動物資源開発研究施設(CARD)におけるコロナ禍の取組み。
発表者;竹尾 透氏
(熊本大学 生命資源研究・支援センター 資源開発分野)
要旨;
熊本大学生命資源研究・支援センターは、遺伝子改変マウスに関する医学・生命科学研究の国際ハブ研究拠点としての役割を担っている。また、当センター動物資源開発研究施設(CARD)では、遺伝子改変マウスの作製、保存および供給を行うマウスバンクを運営しており、研究資源の利活用の促進、本システムの基盤となる生殖工学技術の研究開発、専門人材の育成に取り組んでいる。COVID-19のパンデミックでは、マウスバンクにおいても対人業務、凍結胚・精子の輸送、人材育成に関して変更が求められた。本発表では、コロナ禍におけるCARDマウスバンクの新たな取り組みを紹介する。
CARDマウスバンクの機能強化の一環として、新たな研究資源となる遺伝子改変ラットの作製、保管、供給に必要な生殖工学技術の開発に取り組み、CARDラットバンクを立ち上げた。CARDラットバンクでは、精子の凍結保存、新鮮精子および凍結精子を用いた体外受精による個体作製が可能である。次に、コロナ禍における国内および国際輸送の課題に関しては、ラット精子の冷蔵輸送技術や液体窒素を用いない簡易マウス精子凍結保存法を開発した。また、超過剰排卵誘起法による排卵と交配タイミングを同期化することで受精効率が向上し、体外受精を用いない簡便な受精卵の作製技術も開発した。人材育成に関しては、オンライン生殖工学指導システムを開発し、当センターと国内、タイおよびスリランカの研究施設を繋いでリモート生殖工学研修会を開催した。アウトリーチ活動として、CARDマウスバンクやラットの生殖技術に関するアニメーションを作成した。さらに、当センターに関する理解の向上と次世代研究者の育成を目的として、小中学生向けの科学教室も実施した。
以上、コロナ禍においても、ラットバンクによる研究支援、新規生殖工学技術の開発、オンラインを活用した人材育成、アニメーションや科学教室を通じたアウトリーチ活動に取り組むことで、当センターの機能強化に貢献できたと考えている。今後も、当センターの研究資源を最大限に活用し、社会の変化へ対応しながら、研究、研究支援、人材育成、社会貢献に努めていきたい。
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