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202307ArakiHirotaka

研究発表を行った学会;第45回日本分子生物学会年会
2022年11月30日〜12月2日 (幕張メッセ)
タイトル; LSD1 defines the fiber type-selective responsiveness to environmental stress in skeletal muscle.
発表者;荒木 裕貴氏
(熊本大学 発生医学研究所 細胞医学分野、医学教育部 代謝内科学分野)
要旨;
骨格筋は代謝及び力学的特性の異なる2種類の筋線維(遅筋・速筋)で構成され、環境刺激によって著しい可塑性を示すことが知られる臓器であるが、それぞれの線維型は異なる環境応答性を示すことが知られている。例えば、グルココルチコイド(GC)は速筋選択的な萎縮を引き起こすのに対し、自発運動は遅筋選択的な肥大を誘導する。しかし、このような環境因子と線維型選択的応答に関わる転写制御やエピジェネティックな仕組みは知られていない。
我々はこれまでに、リジン特異的脱メチル化酵素-1(LSD1)が筋芽細胞の分化過程で好気代謝及び遅筋遺伝子の発現を抑制することで、速筋型の分化を誘導することを明らかにした。本研究では、タモキシフェン誘導性に骨格筋特異的にLSD1を欠損した(LSD1 mKO)マウスを樹立し、環境刺激に対する応答性を検討した。GC投与による速筋重量と筋力の低下は、LSD1欠損により促進されており、すなわち筋萎縮の増悪が認められた。その機序として、LSD1阻害下では筋萎縮抑制性転写因子であるFoxk1の核内貯留が抑制され、その結果として筋萎縮及び遅筋関連遺伝子の発現が亢進していることがわかった。
さらに、LSD1 mKOマウスに回転カゴ自発運動を行わせたところ、野生型と比べて遅筋重量増加と持久力向上が認められ、すなわち運動効果が増強されていた。この表現型は、好気代謝を誘導する転写因子ERRγの発現量がLSD1欠損によって抑制されることでもたらされることがわかった。
以上の結果より、LSD1は「epigenetic barrier」として、ストレス刺激下で筋線維型特異的な応答を制御することが示唆された。

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